今週の注目
• 麻酔導入時の低血圧が無気肺を増やす(BJA、ブタ無作為化クロスオーバー): 前酸素化後に正常血圧 vs ニトロプルシド誘発の高度低血圧(MAP中央値46 vs 85 mmHg)を比較。低血圧で無気肺量が増加(12頭中11頭、中央値差20 mL、p<0.001)し、肺血流が背側へ再分布(背側/全肺血流比182% vs 129%)。導入時低血圧は従来見落とされていた無気肺形成因子の可能性。離島でも導入時のMAP維持が無気肺・術後肺合併症予防につながりうる。PMID 42342494
• 周術期即時型過敏反応(アナフィラキシー)診断・管理ガイドライン2025(ACCPM、SFAR/SFA): GRADE法で31の問いに70推奨。診断・危険因子・予定/緊急時の治療・反応後の管理の4領域を整理。高エビデンス推奨は6件にとどまり大半は専門家意見だが、1人麻酔でアナフィラキシーに即応するための実務的ベンチマークとして手元に置く価値が高い。PMID 42335666
• 重症感染症のβラクタム 延長投与 vs 持続投与(Critical Care、35RCT・10,627例のネットワークメタ解析): 延長投与(EI、2〜4時間)も持続投与(CI、24時間)も間欠ボーラス(IB)より臨床治癒率を改善(EI OR1.58、CI OR1.35)。死亡には有意差なし。EIが多くの指標で最上位(在院短縮 -3.49日は境界域)。間接比較だが、シリンジポンプ運用が容易なEIは離島ICUでも現実的な選択肢。PMID 42323608
• 制限輸液後のAKIは長期CKDを増やさない(BJA、RELIEF試験長期追跡): 大腹部手術の制限 vs 開放輸液を90日〜48か月追跡(1670例)。原試験で制限輸液はAKIを増やしたが、新規/進行性CKD(stage≥3)は制限56% vs 開放53.4%(補正OR1.13、有意差なし)でeGFRも差なし。周術期の輸液戦略を選ぶ際、AKIの長期腎予後への波及を過度に恐れる必要は低い。PMID 42331645
• 術後の新規持続的オピオイド使用は7.15%(RAPM、43研究・650万例メタ解析): オピオイド未使用患者が術後にオピオイドを処方され持続使用に至る割合は7.15%(95%CI 6.02–8.38、I²=100%と高異質性)。術式・支払者・年齢で有意差なし。多くの手術件数を考えると数百万人規模がリスク。非オピオイド・区域麻酔中心の鎮痛戦略の重要性を裏づける。PMID 42362357
Lancet Respiratory Medicine(IF 32.8)
1. 欧州の重症喘息と寛解の見込み(SHARP、欧州重症喘息レジストリの多施設観察研究)
Lancet Respir Med (IF 32.8) | PMID 42341792 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42341792/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
欧州重症喘息レジストリ(SHARP CRC)登録の成人13,455例を用いた横断観察研究。重症喘息の疾病負荷と寛解関連領域(増悪、喘息コントロール、気流制限、維持経口ステロイド使用)を評価。患者は女性59%、成人発症82%、罹病期間中央値23年。FEV1/FVC≤0.7が59%、%FEV1<80%が62%、活動性のある疾患領域を1つ以上もつ者が89%。79%が生物学的製剤を使用してもなお66%超が2領域以上活動性で、type 2バイオマーカーの上昇が89%に残存。生物学的製剤未使用群の一部(35%)は10年未満で急速に疾病負荷を蓄積し、進行が加速する表現型を示唆。
PICO
- P: 欧州の成人重症喘息13,455例
- 曝露/層別: 罹病期間・生物学的製剤・type 2バイオマーカー
- O: 高度な治療下でも疾病負荷・type 2炎症が残存。現行の寛解戦略の限界と高リスク患者の早期同定の必要性
すでに知られていること: 生物学的製剤の普及にもかかわらず重症喘息の寛解達成は難しく、欧州の実臨床データは限られていた。
本研究で明らかになったこと: 先進的治療下でも臨床的異質性と疾病負荷が大きく、type 2炎症が遷延。現行戦略では寛解に不十分で、高リスク例の早期同定が必要。
2. 小児間質性肺疾患(chILD)における肺線維化の有病率と経過(レジストリ多施設観察研究)
Lancet Respir Med (IF 32.8) | PMID 42341791 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42341791/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
欧州23か国のchILD-EUレジストリ(0〜18歳)データで肺線維化の有病率と肺機能・生存への影響を評価。1,071例中、レジストリ基準の線維化は20.5%、試験基準では11.6%。組入れ時年齢中央値2.4歳。線維化群は%予測FVCが全追跡時点で15〜20%低く、レジストリ基準の線維化群は生存(死亡または肺移植)が不良(補正前HR1.64、性・年齢・BMIz補正後も有意)。BMI z高値は生存に保護的(HR0.80)。
PICO
- P: chILDと診断された0〜18歳1,071例
- 曝露: 標準化基準による肺線維化の有無
- O: 線維化群は肺機能低値・死亡/肺移植リスク上昇(HR1.64)。抗線維化療法の対象になりうる
すでに知られていること: 肺線維化はchILDで重要だが、有病率・臨床経過・生存への影響は系統的に評価されていなかった。
本研究で明らかになったこと: 標準化基準で線維化を同定でき、低肺機能・死亡リスク上昇と関連。抗線維化療法の候補集団を提示。
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(IF 19.4)
1. 空間プロテオミクスが明かすNSCLCのがん遺伝子特異的免疫ニッチと予後マーカー
Am J Respir Crit Care Med (IF 19.4) | PMID 42363408 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42363408/ | 2026 Jun 26
和訳アブストラクト
非小細胞肺癌(NSCLC)197腫瘍(200万細胞超)を38マーカーの高多重免疫蛍光で解析し、EGFR/KRAS変異が腫瘍微小環境の空間構造と免疫組成に与える影響を検討。EGFR・KRAS変異腫瘍は野生型より腫瘍細胞密度が高く免疫浸潤が低下、細胞傷害性T細胞・樹状細胞・顆粒球が枯渇。EGFR変異腫瘍ではM2様腫瘍関連マクロファージが増加。空間指標はCox回帰で予後と有意に相関し、免疫細胞の位置取りが予後予測因子となることを示した。
PICO
- P: EGFR/KRAS遺伝子型別のNSCLC 197腫瘍
- 曝露: がん遺伝子変異(EGFR/KRAS)
- O: 変異腫瘍は免疫排除・免疫抑制ニッチを形成。空間的免疫構築が予後と相関
すでに知られていること: NSCLCで免疫療法が奏効するのは一部で、がん遺伝子変異が微小環境をどう形作るかの理解は限られていた。
本研究で明らかになったこと: EGFR/KRAS変異が固有の免疫抑制・免疫排除ニッチを作り、空間プロテオミクスが変異標的型免疫療法の指針となりうる予後構築を提示。
2. 粉塵・ヒュームへの職業曝露が将来の有害臨床転帰リスクを高める(COPDGene)
Am J Respir Crit Care Med (IF 19.4) | PMID 42360751 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42360751/ | 2026 Jun 26
和訳アブストラクト
COPDGene登録の現/元喫煙者8,991例(45〜80歳)を、粉塵・ヒュームへの職業曝露で4群に分け最大15年追跡。粉塵+ヒューム曝露は無曝露に比し、将来の呼吸器増悪(補正RR1.38)、動脈硬化性心血管疾患(補正OR1.35)、肺炎(補正OR1.39)のリスク上昇と関連。がん・血栓とは関連なし。
PICO
- P: COPDGeneの現/元喫煙者8,991例
- 曝露: 自己報告の粉塵・ヒューム職業曝露
- O: 粉塵+ヒューム曝露で呼吸器増悪・ASCVD・肺炎リスク上昇
すでに知られていること: 粉塵・ヒューム曝露は呼吸器症状・肺機能悪化と関連するが、将来転帰への影響の検討は不十分だった。
本研究で明らかになったこと: 喫煙者で粉塵+ヒューム曝露が複数の臨床的に重要な転帰の将来リスクと関連。
3. 気管支拡張症の頻回増悪表現型の再考(EMBARCレジストリ)
Am J Respir Crit Care Med (IF 19.4) | PMID 42348458 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42348458/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
欧州・アジア30か国のEMBARCレジストリ19,324例で、過去の増悪回数が将来の増悪・重症増悪に与えるリスクを負の二項回帰で解析。過去増悪1回でIRR1.45、2回1.84、3回2.50、4回以上3.56と段階的に上昇。重症増悪1回は将来の重症増悪と強く関連(IRR3.96)。明確な閾値はなく、頻回増悪表現型は病因・地域を問わず一貫。
PICO
- P: 気管支拡張症19,324例
- 曝露: 過去の増悪回数
- O: 各増悪が将来増悪・重症増悪リスクを段階的に上昇させる(閾値なし)
すでに知られていること: 頻回増悪表現型は従来「年≥3回」と定義されたが、各増悪の寄与や重症度・病因・地域の影響は不明だった。
本研究で明らかになったこと: リスクは増悪回数とともに連続的に上昇し、明確な高リスク閾値はない。表現型は集団・地域を超えて一貫。
4. 喘息・COPDの気道粘液栓——病態・画像・臨床試験への示唆(総説)
Am J Respir Crit Care Med (IF 19.4) | PMID 42330343 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42330343/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
粘液栓は喘息・COPDの重要な病理学的特徴。粘液過濃縮・粘弾性変化・クリアランス障害・粘液線毛輸送の破綻が形成を促す。粘液栓の負荷は増悪増加・スパイロメトリー低下(COPDでは死亡増加)と関連し、生物学的製剤の試験では複数製剤が粘液栓負荷を減らしスパイロメトリーを改善。粘液栓は「治療可能な形質(treatable trait)」となりうる。CTによる定量はすでに研究・臨床に応用可能な段階。
PICO
- 総説のためPICO非該当(テーマ: 粘液栓の病態・画像評価・治療標的としての可能性)
すでに知られていること: 粘液栓は喘息・COPDの病理学的特徴と認識されていたが、臨床的役割の深い検討は最近まで乏しかった。
本研究で明らかになったこと: 粘液栓負荷は増悪・肺機能低下・死亡と関連し、生物学的製剤で減少。CT定量による治療可能形質としての活用を提案。
Critical Care(IF 9.3)
1. 赤血球輸血量と感染リスクの用量反応関係(全国外傷レジストリ、日本)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42365368 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42365368/ | 2026 Jun 27
和訳アブストラクト
日本の全国外傷レジストリ(2019〜2021年)を用いた後ろ向き観察研究。入院後24時間以内の赤血球輸血量で4群(なし0、低1〜4、中5〜9、高≥10単位)に分類。院内感染は無輸血9.1%、低16.6%、中22.8%、高26.8%と増加。無輸血群に比し低(補正RR1.85)・中(1.95)・高(2.07)で有意にリスク上昇。制限三次スプラインでは低用量域で急峻に上昇し高用量域でプラトー。
PICO
- P: 外傷患者55,807例
- 曝露: 24時間以内の赤血球輸血量(None/Low/Moderate/High)
- O: 院内感染(用量依存的にリスク上昇、低用量で急峻・高用量でプラトー)
すでに知られていること: 外傷の蘇生で赤血球輸血は不可欠だが、感染リスクとの関係や用量反応は議論があった。
本研究で明らかになったこと: 24時間以内の輸血量は院内感染リスクと用量依存的に関連。観察研究のため因果は慎重に解釈すべきだが、不要輸血を避ける根拠を補強。
2. 重症患者のタンパク質投与量試験をどう読むか(ベッドサイド向けガイド/総説)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42365349 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42365349/ | 2026 Jun 27
和訳アブストラクト
最近の国際多施設RCT3件(計5,633例)が高用量 vs 通常用量タンパク質を比較。主要評価では高用量で生存退院までの時間や90日の生存・非入院日数を改善せず、180日のEQ-5D-5L機能回復はむしろ悪化。これを踏まえ、血行動態が安定したら低用量で開始し最初の5日で最大1.2 g/kg/日まで漸増するのが望ましい。AKI患者は高用量に特に脆弱な可能性。ICU滞在全体で安全に投与できる最低量や、ICU退室後の最適目標は未確立。
PICO
- P: 重症成人
- I/C: 高用量タンパク質投与 vs 通常/低用量
- O: 高用量は転帰を改善せず機能回復を悪化させうる。上限1.2 g/kg/日・漸増を提案
すでに知られていること: ガイドラインは健常者より高いタンパク質投与を推奨していた。
本研究で明らかになったこと: 近年のRCTは高用量の利益を示さず、低用量開始・1.2 g/kg/日上限・漸増がより安全な選択肢である可能性。
3. ICU回復のための多職種遠隔医療介入(TelePORT、実行可能性RCT)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42365340 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42365340/ | 2026 Jun 27
和訳アブストラクト
敗血症/ARDSでICU入室した成人を、退院後3週・3か月の多職種(ICU医・薬剤師・心理士)遠隔回復クリニック受診 vs 標準ケアに1:1割付した2施設パイロットRCT。91例を無作為化。遠隔群の57.5%が少なくとも1回受診、6か月主要転帰評価は各群31例(67%)が完了。臨床家の参加遵守は高く受容性も良好。PICS複合転帰の探索解析は群間差なし。
PICO
- P: 敗血症/ARDSでICU入室した成人91例
- I: 多職種遠隔ICU回復クリニック
- C: 標準退院後ケア
- O: 実行可能性・受容性は良好(PICS複合転帰は群間差なし、有効性は大規模試験が必要)
すでに知られていること: ICU生存者はPICSを高頻度に経験し、遠隔医療が回復ケアへのアクセスを改善しうるが実行可能性は不明だった。
本研究で明らかになったこと: 多職種遠隔回復クリニックは実行可能で受容性が高い。有効性検証には大規模試験が必要。
4. 重症患者のカンジダ血症を解読する——教師なしクラスタリングで3表現型(多施設)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42365321 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42365321/ | 2026 Jun 28
和訳アブストラクト
フランス16ICUのカンジダ血症492例の後ろ向きコホート。混合データの因子分析+階層クラスタリングで3表現型を同定。表現型1(14.2%、重度免疫抑制・血液腫瘍主体・高重症度)、表現型2(45.3%、高齢肝硬変・早発消化管由来)、表現型3(40.5%、若年・低重症度・カテーテル関連)。90日死亡は72.9%/70.4%/50.3%(p<0.001)。死亡の独立因子は年齢・肝硬変(aHR1.90)・SAPS II、保護因子はエキノキャンディン使用(aHR0.49)とカテーテル関連(aHR0.48)。免疫抑制は死亡と無関連。
PICO
- P: ICUのカンジダ血症成人492例
- 曝露: 教師なしクラスタリングによる表現型
- O: 3表現型で90日死亡が異なる。肝硬変・高齢・重症度が死亡関連、カテーテル由来・エキノキャンディンは保護的
すでに知られていること: 重症患者のカンジダ血症は臨床的に不均一だが、表現型と転帰の関係は未整理だった。
本研究で明らかになったこと: 臨床的に異なる3表現型を同定。感染源(カテーテル由来)と早期エキノキャンディンが予後に重要。
5. 重症胸壁損傷の当日(rapid sequence)手術 vs 早期手術(多施設外傷レジストリ、PSM)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42351245 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42351245/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
ドイツTraumaRegister DGU(2015〜2023)で、重症胸壁損傷(AIS胸部≥3、ISS≥9、48時間生存)の胸壁再建を当日手術(Day 0)vs 早期手術(Day 1〜3)で比較。傾向スコアマッチングで500対。当日群はマッチ後も損傷負荷が高く(ISS 28.1 vs 26.2、予測死亡16.2% vs 10.7%)、院内死亡が約3倍高い(10.6% vs 3.6%、p<0.001)。敗血症・多臓器不全も高いが有意差なし。著者は適応による交絡・生存者バイアスを反映と解釈し、72時間以内の個別化手術を支持。
PICO
- P: 重症胸壁損傷の手術例(マッチ後500対)
- I/C: 当日手術(Day 0)vs 早期手術(Day 1〜3)
- O: 当日群で死亡が約3倍高い(残存交絡・適応による交絡の可能性大)
すでに知られていること: 胸壁再建は72時間以内が良好とされるが、入院当日の「rapid sequence」手術の有効性・安全性は不明だった。
本研究で明らかになったこと: 当日手術群は本質的に高リスクな集団であり、一律のDay-0戦略は支持されない。タイミングは全体の損傷重症度に応じ個別化すべき。
6. 敗血症性ショック等の血管拡張病態における微小循環不全の不可避性(概念・計算モデル)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42343425 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42343425/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
血圧・心拍出が回復しても不均一な毛細血管灌流が残る「血行動態の非干渉性(haemodynamic incoherence)」を説明する概念・計算モデルを構築。100万本の並列細動脈ネットワークを、心拍出・血管運動状態・ずり応力調節の3変数で制約しシミュレート。一定のずり応力目標では総流量需要は血管半径の3乗和に比例し、わずかな全身血管拡張でも必要心拍出が大きく増える。心拍出が不足すると低ずり応力の血管が機能的に脱リクルートされ、灌流の不均一化と機能的毛細血管密度低下が生じる。微小循環不全は独立した病態ではなく、血管拡張・流量制限・ずり応力調節の相互作用の必然的帰結として現れると示し、全身血管拡張やずり応力目標を下げる治療が超正常心拍出なしに微小循環を回復しうると予測。
PICO
- 概念・モデル研究のためPICO非該当(テーマ: 微小循環不全を生む生理学的機序の統一的枠組み)
すでに知られていること: 微小循環不全は敗血症性ショックの特徴で死亡と関連するが、大循環との関係や機序は十分理解されていなかった。
本研究で明らかになったこと: 微小循環不全は血管拡張・流量制限・ずり応力調節の相互作用の必然的帰結と説明。血行動態管理の再解釈と検証可能な仮説を提示。
7. 心臓手術後早期のスボレキサントと睡眠構築(RCT)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42337809 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42337809/ | 2026 Jun 23
和訳アブストラクト
心臓手術後ICUの成人100例を、オレキシン受容体拮抗薬スボレキサント20mg/日 vs プラセボに無作為化(抜管後初夜から最大7日)。EEG(SedLine)で睡眠を盲検採点。主要評価の持続睡眠開始後の覚醒(WASO)はスボレキサント200.7分 vs プラセボ184.2分(p=0.33)、総睡眠時間も差なし(p=0.92)。せん妄発生・せん妄なし日数、主観的睡眠の質、レスキュー薬使用も差なし。
PICO
- P: 心臓手術後ICUの成人100例
- I: スボレキサント20mg/日
- C: プラセボ
- O: WASO・総睡眠時間・せん妄に有意差なし
すでに知られていること: ICUの心臓術後患者は睡眠が障害され、鎮静薬は睡眠構築を乱しせん妄リスクを高めうる。スボレキサントは不眠で睡眠を改善する。
本研究で明らかになったこと: 心臓術後のスボレキサントはWASO・術後せん妄を改善しなかった。
8. 心臓血管外科ICU患者の赤血球輸血に対するSvO₂反応(後ろ向き観察)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42332804 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42332804/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
心臓血管外科ICUで輸血前Hb≥7.5 g/dLかつ前後のSvO₂測定がある成人1,352例の単施設後ろ向き研究。輸血でHbは9.82→10.24 g/dL(+0.42、p<0.001)だが平均SvO₂は73.79→73.86%(+0.08%、p=0.671)とほぼ不変。輸血前SvO₂が低いほど個人レベルのSvO₂上昇(ΔSvO₂≥5%)が起こりやすく(補正OR0.89/1%、AUC0.778、Youdenカットオフ69%)。ただし組織酸素化・臨床的利益は示されず、SvO₂(69%含む)を輸血トリガーとすることは支持しない。
PICO
- P: 心臓血管外科ICUの輸血例1,352例
- 曝露: 輸血前SvO₂
- O: 低輸血前SvO₂は急性SvO₂上昇と関連も、平均変化は最小。SvO₂を輸血トリガーにする根拠なし
すでに知られていること: SvO₂は酸素供給と消費の全身的関係を反映するが、上昇が必ずしも組織酸素化改善を意味しない。
本研究で明らかになったこと: 輸血前SvO₂低値は急性SvO₂上昇と関連するが平均変化は乏しく、輸血の指標・トリガーとしては不適。
9. 体組成ガイド下のタンパク質投与(PROGRESS-ICU、前後比較)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42332775 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42332775/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
ICU成人620例(各群310)で、除脂肪量(FFM)補正投与(1.85 g/kg/日 dry FFM)vs 総体重ベース(1.5 g/kg/日)を前後比較。90日死亡は群間差なし(補正HR0.78、95%CI 0.56–1.09)。FFMベースはICU滞在短縮(HR0.79)・人工呼吸日数減少(HR0.79)と関連、尿素/クレアチニン比上昇とFFM喪失は総体重群で大。ただしCOVID-19入院割合の偏り(40% vs 1%)等の交絡が大きく、探索的でRCTによる確認が必要。
PICO
- P: ICU成人620例
- I/C: FFM補正タンパク質投与 vs 総体重ベース投与
- O: 90日死亡は差なし。ICU滞在・人工呼吸日数・代謝指標は差を認めるが交絡の可能性大
すでに知られていること: 重症患者の最適なタンパク質投与基準(体重 vs 除脂肪量)は未確立だった。
本研究で明らかになったこと: FFMベース投与は死亡を変えず。副次指標の差は残存交絡を反映しうる探索的所見で、確認試験が必要。
10. 重症感染症のβラクタム 延長 vs 持続投与(ネットワークメタ解析)
Crit Care (IF 9.3) | PMID 42323608 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42323608/ | 2026 Jun 20
和訳アブストラクト
重症感染症成人でβラクタムの延長投与(EI、2〜4時間)・持続投与(CI、24時間)・間欠ボーラス(IB)を比較した35RCT(10,627例)のネットワークメタ解析。死亡はEIが最上位(SUCRA74.2%)だがIBと有意差なし。臨床治癒はEI(OR1.58)・CI(OR1.35)ともIBより有意に改善しEIが1位。微生物学的成功はCIが最上位だが有意差なし。在院はEIで-3.49日(境界域有意)。有害事象に差なし。
PICO
- P: 重症感染症の成人(35RCT・10,627例)
- I/C: 延長投与(EI)vs 持続投与(CI)vs 間欠ボーラス(IB)
- O: EI・CIともIBより臨床治癒改善。死亡差なし。EIが多指標で良好(間接比較)
すでに知られていること: βラクタムの長時間投与はIBより有利とされるが、EIとCIの直接比較がなく優劣は不明だった。
本研究で明らかになったこと: EI・CIともIBより治癒を改善。間接的にはEIが多くの指標で優れ、実務上の容易さからも有力。直接比較試験での確認が必要。
Chest(IF 8.6)
1. ソタテルセプト併用例におけるプロスタサイクリン系治療のデエスカレーション(How I Do It/総説)
Chest (IF 8.6) | PMID 42341978 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42341978/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
肺動脈性肺高血圧症(PAH)でソタテルセプトが併用療法に組み込まれるなか、特にプロスタサイクリン投与中で持続的に改善した患者でプロスタサイクリンを安全に減量できるかが問題となる。機能分類・6分間歩行・バイオマーカー・複合リスクスコアは、特に高機能患者でデエスカレーション判断には分解能不足。本稿は心肺運動負荷試験(CPET)を相補的な負荷ベース評価として位置づけ、確立された臨床評価と統合した構造化意思決定枠組みを提案する。
PICO
- 総説(How I Do It)のためPICO非該当(テーマ: ソタテルセプト時代のプロスタサイクリン減量の患者選択とCPET活用)
すでに知られていること: ソタテルセプトはPAHの肺血管リモデリングを改善しうるが、併用プロスタサイクリンの減量基準は不明だった。
本研究で明らかになったこと: 慎重な患者選択下でのプロスタサイクリン減量を支持する知見を整理し、CPETを組み込んだ意思決定枠組みを提示。
2. アイゼンメンガー症候群——呼吸器内科の視点(総説)
Chest (IF 8.6) | PMID 42341977 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42341977/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
アイゼンメンガー症候群(ES)は先天性心疾患に伴うPAHの進行形で、肺血管病変と右左/双方向シャントを特徴とする。肺機能では拘束性パターンが多く、閉塞性障害・気管支過敏も生じうる。血管病変に伴う拡散障害が頻繁で運動能低下・生存不良と関連。CPETと6分間歩行が予後情報を与え、peak VO2が最強の予測因子。肺動脈拡張による血栓・圧迫、気管支由来の喀血、下気道感染も合併。長期酸素療法はシャント由来低酸素のため利益限定的だが、監視下リハビリは安全で機能改善が可能。難治例では両肺/心肺移植が唯一の根治。
PICO
- 総説のためPICO非該当(テーマ: アイゼンメンガー症候群の肺病変の評価・予後・管理)
すでに知られていること: ESでは血管リモデリングが中心とされ、肺自体の関与は過小評価されがちだった。
本研究で明らかになったこと: 肺異常が症状・予後に有意に影響する多臓器疾患であり、系統的な肺評価がリスク層別化と個別化支持療法に有用。
3. 先天性心疾患関連PAHの潜在クラス分析による表現型化(全国前向きレジストリ)
Chest (IF 8.6) | PMID 42323108 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42323108/ | 2026 Jun 20
和訳アブストラクト
PAH-CHD成人889例を三尖弁後/前シャントに分け、28変数で潜在クラス分析(LCA)。各サブセットで4表現型を同定。後シャントでは「開存シャント下の適応」群が右室機能保持で最良生存、「不適応・不全」「閉鎖シャント・不全」群は2〜3倍の死亡。「過動状態」群は併用療法から特異的に利益(交互作用p=0.026)。前シャントでも「高齢男性・併存症」群は死亡高く治療反応が減弱(p=0.037)。データ駆動型表現型化がリスク層別化と個別化治療判断に有用。
PICO
- P: PAH-CHD成人889例
- 曝露: LCA由来の表現型
- O: 表現型ごとに生存・治療反応が異なる(個別化治療の指針)
すでに知られていること: PAH-CHDは予後・治療反応が不均一で、従来の解剖・病態分類では捉えきれなかった。
本研究で明らかになったこと: LCAで臨床像・生存・治療反応の異なる表現型を同定し、個別化意思決定の新たな手法を提供。
British Journal of Anaesthesia(IF 9.2)
1. 区域麻酔の手技遂行・安全・技能習得への視線追跡技術の応用(スコーピングレビュー)
Br J Anaesth (IF 9.2) | PMID 42350172 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42350172/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
区域麻酔における視線追跡(eye-tracking)の文献を整理したスコーピングレビュー(14論文、多くがシミュレーション)。熟練者は一貫して効率的な視線行動(臨床的に重要な関心領域での少数かつ長い固視)を示したが、視線指標を妥当性ある手技能力指標と相関させた研究は少ない。教育的利益・安全改善のエビデンスは予備的で、臨床環境での研究は1件のみ。
PICO
- 総説(スコーピングレビュー)のためPICO非該当(テーマ: 区域麻酔技能評価への視線追跡の応用)
すでに知られていること: 区域麻酔研修は症例曝露・指導・シミュレーション資源の制約を受け、客観的な技能評価法が求められていた。
本研究で明らかになったこと: 視線追跡は熟練の視覚戦略を可視化するが、手技能力・患者転帰との因果は未確立。客観的能力指標との検証と臨床応用が今後の課題。
2. 英国麻酔科研修医の縦断研究(論説)
Br J Anaesth (IF 9.2) | PMID 42350170 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42350170/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
横断調査では研修医の負担蓄積や離脱の起点を捉えられない。2024年コホート縦断研究のベースラインは、従来世代より多様で健康状態に開放的だがストレスも高い研修医像を示す。76%が常勤未満の研修を希望し、専門研修開始時点で高い「努力-報酬不均衡」。特にACCS経路の非麻酔ローテーションがバーンアウト増加と相関し、研修ボトルネックやAnaesthesia Associatesの役割への不安も。縦断研究は人員計画を逸話からエビデンスへ移す鍵。
PICO
- 論説のためPICO非該当(テーマ: 英国麻酔科研修医の負担・ウェルビーイングの縦断的把握)
すでに知られていること: 麻酔科人員の横断調査はスナップショットに留まり、負担の蓄積過程は不明だった。
本研究で明らかになったこと: 研修開始早期から努力-報酬不均衡が高く、柔軟で心理的に安全な研修環境整備の必要性を示す縦断データを提供。
3. 全身麻酔中の低血圧と肺無気肺(無作為化クロスオーバー実験研究)
Br J Anaesth (IF 9.2) | PMID 42342494 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42342494/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
麻酔導入を模した条件で、前酸素化後に正常血圧 vs ニトロプルシド誘発の高度低血圧を比較した、麻酔・機械換気下ブタ12頭の評価者盲検クロスオーバー研究。主要評価のCTによる総無気肺量は、低血圧(MAP中央値46 mmHg)で正常血圧(85 mmHg)より大きく、12頭中11頭で増加(中央値差20 mL、95%CI 9–38、p<0.001)。低血圧時は肺血流が背側へ再分布(背側/全肺血流比182% vs 129%)し、混合静脈血酸素飽和度も低下(43% vs 48%)。
PICO
- P: 麻酔・機械換気下のブタ12頭
- I: 高度低血圧(ニトロプルシド誘発、MAP約46 mmHg)
- C: 正常血圧(MAP約85 mmHg)
- O: 低血圧で無気肺量増加(中央値差20 mL)。背側への低酸素血流再分布
すでに知られていること: 無気肺は全身麻酔で頻発し術後肺合併症の一因だが、予防策を講じても広範な無気肺がしばしば残り、別の因子の関与が示唆されていた。
本研究で明らかになったこと: 高度低血圧が無気肺を増やすことを実験的に示し、導入時低血圧が従来見落とされた無気肺形成因子である可能性を提示。
4. ECPR後の臓器提供をめぐる倫理的考察(論説)
Br J Anaesth (IF 9.2) | PMID 42342493 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42342493/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
体外循環式心肺蘇生(ECPR)後の臓器提供は、患者中心のケア・自律尊重・治療の比例性に確固として根ざす限り倫理的に正当化されうる。生命維持療法の継続/中止の判断は提供の検討から分離し、透明な手続きと堅固な倫理的監督を要する。家族の意思決定支援が基本。医療者も道徳的主体であり、その視点・苦悩への承認と制度的支援が必要。倫理的正当性は得られた転帰ではなく、保たれた意図・尊重された手続き・維持された信頼に依拠する。
PICO
- 論説のためPICO非該当(テーマ: ECPR後臓器提供の倫理的枠組み)
すでに知られていること: ECPRが蘇生実践に統合されるなか、その後の臓器提供をめぐる倫理的論点の整理が必要だった。
本研究で明らかになったこと: 提供判断と治療中止判断の分離、透明性、家族・医療者支援を柱とする先取り的な倫理的枠組みの重要性を提示。
5. 周術期輸液と慢性腎臓病——RELIEF試験の長期追跡
Br J Anaesth (IF 9.2) | PMID 42331645 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42331645/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
大腹部手術の制限 vs 開放輸液を比較したRELIEF試験で、術後90日〜48か月の長期追跡(1,670例)を実施。原試験で制限輸液はAKIを増やしたが、本追跡の主要評価である新規/進行性CKD(stage≥3)は制限56% vs 開放53.4%(補正OR1.13、95%CI 0.91–1.41)で有意差なし。最低eGFR・eGFR最大変化などの副次評価も差なし。感度分析でも結果は不変。
PICO
- P: RELIEF試験参加者1,670例(大腹部手術)
- I/C: 制限輸液 vs 開放輸液
- O: 新規/進行性CKD(stage≥3)は群間差なし(補正OR1.13)
すでに知られていること: RELIEF試験で制限輸液は術後AKIを増やしたが、それが長期CKDにつながるかは不明だった。
本研究で明らかになったこと: 制限輸液後のAKIは長期のCKD増加とは関連しなかった(post hoc解析の範囲内)。
Anesthesiology(IF 9.1)
1. 腋窩腕神経叢ブロック消退前後の過敏性の定量的感覚検査による評価(健常ボランティア)
Anesthesiology (IF 9.1) | PMID 42359695 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42359695/ | 2026 Apr 03
和訳アブストラクト
神経ブロック消退後の急激な疼痛増悪(リバウンド痛)が、残存手術痛の顕在化か、痛覚閾値のリセットによる新規痛覚過敏かは不明。健常ボランティア40例に単回腋窩腕神経叢ブロック(メピバカイン1.5% 15cc)を施行し対側を対照に、定量的感覚検査(QST)で比較。運動回復60分後の熱痛閾値(1/10痛)は両腕で有意差なし(ブロック42.8℃ vs 対照41.1℃、p=0.157)。手術痛のない条件でブロック側の客観的過敏は認めず。
PICO
- P: 健常ボランティア40例
- I/C: 単回腋窩腕神経叢ブロック施行腕 vs 非施行(対照)腕
- O: ブロック消退時に客観的な過敏性は認めず(リバウンド痛の新規過敏説を支持せず)
すでに知られていること: リバウンド痛は知られるが、その本態(残存手術痛の顕在化か新規痛覚過敏か)は不明だった。
本研究で明らかになったこと: 手術痛のない健常者では単回ブロック消退後に過敏性のエビデンスはなく、リバウンド痛は主に未治療の手術痛の顕在化を反映する可能性。
2. 麻酔科における医学教育研究の現状と将来(Anesthesia Research Councilの取り組み)
Anesthesiology (IF 9.1) | PMID 42359693 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42359693/ | 2026 Mar 09
和訳アブストラクト
麻酔科の医学教育研究を支える戦略的介入がなければ、将来の麻酔科医養成が損なわれうる。Anesthesia Research Councilが教育リーダーの作業部会を招集し、教育研究を頑健で自立した分野へ発展させる道筋を検討。資金・出版の現状把握、DEIを支える教育枠組みの統合、研究資源の民主化・協働・ファカルティ育成のための提言(多様な医師人材育成、教育環境、大学院教育の質と説明責任、文化的能力、アドボカシー)を提示。
PICO
- 総説のためPICO非該当(テーマ: 麻酔科の医学教育研究の現状分析と発展のための提言)
すでに知られていること: 麻酔科の教育研究を頑健な分野へ育てる包括的戦略は存在しなかった。
本研究で明らかになったこと: 資金・出版の現状を踏まえ、卓越拠点とキャリア育成プログラム創出に向けた優先的アクションを提言。
3. CTベース体組成評価による術前心血管リスク予測(前向きコホート)
Anesthesiology (IF 9.1) | PMID 42329743 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42329743/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
心血管疾患/危険因子を有し非心臓大手術を受ける患者で、術前腹部CT(第3腰椎レベル)の骨格筋・脂肪組織の面積と放射線濃度を定量し、術後30日の複合心血管イベント予測への付加価値を検討(PREVENGE-CB等、1,594例、イベント13.2%)。骨格筋・脂肪面積が大きいほど低リスク、脂肪の高濃度・筋の低濃度は高リスク。骨格筋面積・筋濃度・皮下脂肪濃度の3指標がRevised Cardiac Risk Indexに対し識別能を改善(ΔAUC=0.136)。
PICO
- P: 非心臓大手術を受ける心血管リスク保有患者1,594例
- 曝露: CT由来体組成指標
- O: 従来予測因子に加え術後心血管イベント予測を改善(ΔAUC=0.136)
すでに知られていること: 術前心血管リスク予測は最適とは言えず、CT体組成指標の予測価値は不明だった。
本研究で明らかになったこと: CT由来体組成指標が従来の臨床予測因子を超えて術後心血管イベント予測を改善。
Anaesthesia(IF 6.9)
1. 肩手術における単回 vs 持続腕神経叢ブロックの患者報告アウトカム(メタ解析・TSA)
Anaesthesia (IF 6.9) | PMID 42337915 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42337915/ | 2026 Jun 23
和訳アブストラクト
待機的肩手術での単回 vs 持続腕神経叢ブロックの患者報告アウトカムを比較したRCT20件(1,198例)のメタ解析+逐次解析。持続ブロックは安静時痛が12・24・48時間で有意に低い(平均差 -1.96/-1.66/-1.18)。運動時痛は24・48時間でプール可も有意差は明確でない(MD -2.04/-1.30)。共主要評価は肩手術の最小臨床的重要差に近接/超過し、持続法に有利。
PICO
- P: 待機的肩手術の成人(20RCT・1,198例)
- I/C: 持続腕神経叢ブロック vs 単回ブロック
- O: 持続法で安静時痛が有意に低い。動的痛・長期機能回復は不確実
すでに知られていること: 単回・持続いずれも肩手術の術後鎮痛に広く用いられるが、患者中心の枠組みで包括的に比較されていなかった。
本研究で明らかになったこと: 持続ブロックは安静時痛など患者中心アウトカムで良好。動的痛・長期機能への効果は不確実。
2. 非心臓手術後の心合併症予測——機械学習 vs 従来法(ベイズ流ネットワークメタ解析)
Anaesthesia (IF 6.9) | PMID 42325156 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42325156/ | 2026 Jun 22
和訳アブストラクト
非心臓手術後の心有害事象予測について、機械学習(ML)と従来リスクスコア(Revised Cardiac Risk Index基準)を比較した13研究(54モデル・927,113例)のベイズ流ネットワークメタ解析。MLは概して従来スコアを上回り、自動ML(AutoML)が最上位(SUCRA96.6、best version MD0.28)、勾配ブースティングも優位(SUCRA82.4)。ただし外部検証を行った研究はなく、低バイアスは6件のみ。
PICO
- P: 非心臓手術患者(13研究・927,113例)
- I/C: 機械学習モデル vs 従来リスクスコア(RCRI)
- O: MLが識別能で優位(AutoML・勾配ブースティングが上位)。ただし外部検証なし
すでに知られていること: RCRI等の従来スコアは識別能が中等度で、MLは非線形関係を扱えるが従来法との比較は不明確だった。
本研究で明らかになったこと: 多くのMLが従来スコアより良好な識別能。ただし較正報告・外部検証の欠如により臨床導入には前向き多施設評価が必要。
Anesthesia and Analgesia(IF 3.8)
1. 平均動脈圧と脳酸素飽和度に基づく連続リアルタイム脳自動調節能評価の新アルゴリズム
Anesth Analg (IF 3.8) | PMID 42363900 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42363900/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
平均動脈圧(MAP)とNIRS脳酸素飽和度(StO2)の動的相互作用を解析し、脳自動調節能を0〜100で表す指標(CAI)を生成する新アルゴリズムを、動物(子豚10頭の調節性低血圧)と手術患者71例で検証。ヒトでは障害された自動調節(MAPが個別の下限/上限を超える)の識別能がAUC0.92(CAI閾値45で感度0.82・特異度0.94)、動物でAUC0.99。MAPと処理StO2信号で自動調節能を正確に判別でき、個別化血圧管理の可能性。
PICO
- P: 手術患者71例+子豚10頭
- I/比較: CAIアルゴリズム vs 自動調節下限/上限のground truth
- O: 自動調節障害をAUC0.92(ヒト)/0.99(動物)で識別
すでに知られていること: 脳自動調節の下限・上限は個人差が大きく、限界外への曝露は合併症と関連。連続・リアルタイム評価は臨床価値がある。
本研究で明らかになったこと: MAPとStO2のみで自動調節能を正確に判別するアルゴリズムを検証。術中の個別化血圧管理に応用しうる。
2. 脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の麻酔管理・合併症・気道管理(四次小児病院の後ろ向きチャートレビュー)
Anesth Analg (IF 3.8) | PMID 42363899 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42363899/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
SMA患者175例・1,804件の麻酔をレビュー。78.9%がヌシネルセン髄注のための腰椎穿刺。気管挿管下の全身麻酔は13.0%、困難挿管は全体の1.2%(挿管例の9.4%)。SMA型・年齢・ハローフレームと困難挿管に有意な関連なし。重度麻酔関連有害事象は0.33%。腰椎穿刺の88.1%は自然気道(経鼻カニューラ・マスク・在宅CPAP/BiPAP)または既存気管切開で施行。
PICO
- P: 麻酔を要したSMA患者175例(1,804手技)
- 曝露: SMA患者への麻酔・気道管理
- O: 困難挿管9.4%、重度有害事象0.33%。多くは髄注目的の腰椎穿刺で自然気道管理
すでに知られていること: SMA患者の麻酔管理・有害事象・困難挿管に関するデータは限られていた。
本研究で明らかになったこと: 困難挿管9.4%・重度有害事象0.33%。周術期・気道リスクへの研究の必要性を示す。
3. 肺動脈カテーテル使用と心臓手術後転帰の関連(エントロピーバランス・コホート)
Anesth Analg (IF 3.8) | PMID 42335355 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42335355/ | 2026 Jun 24
和訳アブストラクト
米国単施設の心臓手術成人10,044例(PAC使用58.2%)をエントロピーバランスで補正した後ろ向き研究。PAC使用は90日死亡(RR0.966、p=0.816)・院内死亡と関連せず。一方でICU滞在延長(中央値差13.1時間)、AKI増加(RR1.12)、長時間の強心薬使用(RR4.13)・有意な昇圧薬需要(RR1.37)・正の輸液バランス・輸血量・術後臓器障害時間・人工呼吸時間の増加と関連。
PICO
- P: 心臓手術成人10,044例
- 曝露: 肺動脈カテーテル(PAC)使用
- O: 90日死亡と無関連だが、治療強度の増大・ICU滞在延長・AKI増加と関連
すでに知られていること: PACは心臓手術で広く用いられるが、転帰との関連は相反する報告があった。
本研究で明らかになったこと: PAC使用は死亡と関連しないが、より高い治療強度と長いICU滞在に結びつく。
4. 周術期の生演奏インタラクティブ音楽療法(スコーピングレビュー)
Anesth Analg (IF 3.8) | PMID 42329136 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42329136/ | 2026 Jun 23
和訳アブストラクト
認定音楽療法士による周術期の生演奏/録音音楽療法を整理したスコーピングレビュー(25論文、1,821例、9か月〜94歳)。術前17・術中8・術後15件で実施。小児は術前の遊び・能動的関与中心、成人は内省・情動焦点型。不安・気分・痛みの支援に低リスクの補助となりうるが、小規模・期待効果・報告の不統一・療法士接触対照の欠如により慎重な解釈が必要。
PICO
- 総説(スコーピングレビュー)のためPICO非該当(テーマ: 周術期の生演奏音楽療法の特徴と影響)
すでに知られていること: 音楽療法は周術期に増えているが、麻酔ケアへの統合は不均一で現状整理が必要だった。
本研究で明らかになったこと: 低リスクの補助として不安・気分・痛みを支援しうるが、エビデンスの質に限界があり今後の研究が必要。
Regional Anesthesia and Pain Medicine(IF 3.5)
1. 米国のオピオイド未使用患者における術後の新規持続的オピオイド使用(観察研究のメタ解析)
Reg Anesth Pain Med (IF 3.5) | PMID 42362357 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42362357/ | 2026 Jun 26
和訳アブストラクト
術後の新規持続的オピオイド使用(NPOU)の米国での発生率と危険因子を推定したメタ解析(43観察研究、650万7,173例)。NPOUのプール発生率は7.15%(95%CI 6.02–8.38、I²=100%、予測区間1.34–17.02%)。標本サイズ・人種・性別・平均年齢と有意な関連なし。術式・支払者・後続鎮痛/手術でも有意差なし。ただし「術後90〜180日のオピオイド使用」と定義した35研究では8.29%、より厳格な「180日間の使用」定義の8研究では2.89%。
PICO
- P: オピオイド未使用の術後成人(43研究・650万例)
- 曝露: 急性術後痛へのオピオイド処方
- O: 新規持続的オピオイド使用 7.15%(定義により2.89〜8.29%)
すでに知られていること: 術後NPOUはオピオイド乱用・死亡・医療資源利用増加と関連する重大な合併症である。
本研究で明らかになったこと: NPOUは7.15%と高頻度かつばらつきが大きい。手術件数を考えると数百万人がリスクで、非オピオイド鎮痛戦略の重要性を裏づける。
2. 膝関節の感覚神経支配——関節枝マッピングと感覚受容器分布のナラティブレビュー
Reg Anesth Pain Med (IF 3.5) | PMID 42362356 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42362356/ | 2026 Jun 26
和訳アブストラクト
膝の侵害受容器分布と関節枝支配を整理したナラティブレビュー(健常膝の解剖・組織・免疫染色・神経追跡の32研究)。侵害受容器分布は空間的不均一性が強く、前方関節包が最高密度。後十字靱帯は前十字靱帯より高密度。膝の神経支配は大腿・坐骨・閉鎖神経から一貫して生じ、重複と解剖学的変異が大きい。主要な感覚寄与は伏在神経、広筋への神経、膝窩叢を形成する脛骨関節枝、総腓骨神経、閉鎖神経枝。
PICO
- 総説(ナラティブレビュー)のためPICO非該当(テーマ: 膝関節の感覚神経支配と侵害受容器分布のマッピング)
すでに知られていること: 膝の侵害受容器分布はよく特徴づけられておらず、コンセンサスがなかった。
本研究で明らかになったこと: 前方関節包が主要な侵害受容領域で、神経支配は大腿・坐骨・閉鎖神経の重複網。標的鎮痛・インターベンション戦略の解剖学的基盤を提供。
3. 慢性疼痛への短期トラウマ焦点化介入の実行可能性・受容性・転帰(パイロット)
Reg Anesth Pain Med (IF 3.5) | PMID 42350064 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42350064/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
混合病因の慢性疼痛+トラウマ曝露の成人42例に、感情認識・表出療法を改変した短期介入STEPP(週1回×3回・遠隔)を施行した単群パイロット。全実行可能性基準を達成(適格者の93%が登録、登録者の90%が治療開始、開始者の97%が完了、追跡完了率は1・3か月で97%)。ベースラインから治療後に疼痛強度・疼痛干渉・PTSD・破局化・運動恐怖が有意に改善し3か月まで維持。効果量は疼痛強度で小、他は中〜大。
PICO
- P: 慢性疼痛+トラウマ曝露の成人42例
- I: 短期トラウマ焦点化介入STEPP(単群)
- O: 実行可能・受容性良好。疼痛・トラウマ関連転帰が改善(RCTで有効性確認が必要)
すでに知られていること: トラウマ曝露は慢性疼痛に多く予後不良と関連し、重複過程を標的とする簡便な介入が求められていた。
本研究で明らかになったこと: STEPPは実行可能・受容性が高く、疼痛・トラウマ関連転帰の改善が有望。RCTでの有効性検証が必要。
4. 心臓手術における局所区域麻酔技術の鎮痛効果(ネットワークメタ解析)
Reg Anesth Pain Med (IF 3.5) | PMID 42350062 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42350062/ | 2026 Jun 25
和訳アブストラクト
心臓手術成人での局所区域鎮痛(LRA)技術を比較した133RCT(9,816例)のベイズ流ネットワークメタ解析。対照に比し24時間オピオイド消費を、髄腔内オピオイド(IT、-14.8 MME)・脊柱起立筋面ブロック(ESPB、-9.7)・傍胸骨肋間面ブロック(PIPB、-6.3)が低減。ITが最大かつ一貫した疼痛低減(VAS -1.2 cm)。ESPB・PIPB・胸部硬膜外(TEA)がICU滞在を短縮、TEAのみ在院を1.2日短縮。主要なブロック関連合併症の報告なし。
PICO
- P: 心臓手術成人(133RCT・9,816例)
- I/C: 各種LRA技術(IT/ESPB/PIPB/TEA等)vs 対照
- O: ITが最大の鎮痛・オピオイド低減。ESPB・PIPBは神経軸禁忌時の有望な代替
すでに知られていること: 心臓手術後痛にオピオイドが中心だが、有害事象からLRA代替が模索され、技術間の比較データが乏しかった。
本研究で明らかになったこと: ITが24時間でのオピオイド消費・疼痛を最も低減。ESPB・PIPBは神経軸禁忌時の有望な代替だが効果量は小さい。標準化に高質試験が必要。
5. VATS後の回復の質に対する持続前鋸筋面鎮痛の影響(二重盲検RCT)
Reg Anesth Pain Med (IF 3.5) | PMID 42336494 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42336494/ | 2026 Jun 23
和訳アブストラクト
待機的VATS成人で、SAPBカテーテルから0.2%ロピバカイン vs 生理食塩水を持続注入(標準化マルチモーダル鎮痛に追加)した二重盲検RCT(173例)。主要評価のPOD1のQoR-40はSAPB群で高いが有意差なし(176 vs 172、p=0.10)。SAPBは回復室(8.0 vs 10.6 MME、p=0.039)とPOD1(12.73 vs 16.45 MME、p=0.035)でオピオイド消費を有意に低減。在院は0.8日短縮も有意差なし。疼痛スコア・合併症・30日再入院は同等。
PICO
- P: 待機的VATS成人173例
- I: 持続前鋸筋面ブロック(SAPB、0.2%ロピバカイン)
- C: 生理食塩水
- O: QoR-40(POD1)に有意差なし。オピオイド消費は有意に低減
すでに知られていること: VATSは低侵襲だが術後痛が強く、SAPBが有望視されるが持続注入のQoR-40への効果は限られていた。
本研究で明らかになったこと: 持続SAPBは主要評価のQoR-40を改善しなかった。オピオイド低減等の副次差は探索的で、大規模試験が必要。
その他(論説・レター・訂正・抄録なし等)
Lancet Respiratory Medicine
Intensive Care Medicine
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine
Critical Care
Critical Care Medicine
British Journal of Anaesthesia
Anesthesiology
Anaesthesia
Journal of Clinical Anesthesia
Anesthesia and Analgesia
Regional Anesthesia and Pain Medicine
Canadian Journal of Anaesthesia
Journal of Intensive Care
Minerva Anestesiologica
Journal of Anesthesia
Journal of Anesthesia, Analgesia and Critical Care
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